ゲームの話をします

書きたくなったことを書きます。脱筆不精

Paradise Killer ネタバレなしのレビュー(?)

Paradise Killer(パラダイスキラー)というゲームについて

 このゲームはビジュアルで好悪がパッキリ判明するタイプなので、「PV見て惹かれたら買い」くらいの雑な紹介になる。

 感想というには感情が薄く、考察というほど内容には触れず、レビューというには私的すぎるので、どういうポジションで書くか迷ってしまった。でも言いたいことはあるので、とりあえずレビューという形でまとめることにした。本レビューは「PVで惹かれたけど、不安な点もあって購入をためらっている」って人向けの記事になると思う。 

 PC(Steam)とSwitchで配信中。プレイしたのはSwitch版(スイッチ本体は旧式のもの)。約22時間でコンプリート。エラー落ちは一回。処理落ちはほぼなし。やや重い箇所もあったが、プレイに支障はなし。

 

酔いそう……

 私は3D酔いにはかなり強いと自負していたのだが、初期設定では見事に酔った。酔いにくい調整(視野角を100あたりにする、モーションブラーをオフ、カメラ速度を下げるなど)は可能。カメラの仕様とは別に、ゲーム自体のつくりがかなり酔いやすい構造になっていると感じる。

 具体的には「レティクルが小さい上にほとんど目立たないため、視点が安定しない」「かなりの頻度で高所から飛び降りる必要に駆られる」「団地エリアの狭い折り返し階段を“主観視点で”何度も何度も上り下りする場面が生じる」「高低差の激しい波打つ回廊」「暗くてギラギラしたフィールド」などなど。

 カメラ設定以外の面でも3D酔い促進設計になっているので、画面酔いしやすい人には残念ながらお勧めできない

 

推理もの?

 推理する場面はあんまりない。島中を駆け回って証拠品を集めていけば、誰でも事実に辿りつける。裁判も簡素。難しいことはなにもない。ぜひプレイしてパラダイスの深淵を覗こう。証拠集めの際に軽度の謎解きがあるので、謎解きゲーの要素もちゃんとある。

 推理そのものより、証拠品を集めるための探索が曲者。歩いて稼ぐ捜査官なので、島の上から下から端から端から隅から隅まで、あっちもこっちもどこもかしこも歩き回る必要がある。プレイ時間の大部分が移動と探索に費やされるあたり、推理ゲームというよりアクションゲーム(それも探索ゲー寄り)の色味が強いと言える。捜査メモがしっかりしているので、何をしたらいいのか途方に暮れることはない。目的のものが見つからず、途方に暮れることはある。

 

難しいアクションは必要?

 あまり必要ない。ごり押しで行ける場所はほとんどなく、行けないってことは何かが足りないってこと。能力とか、謎解きとか。ごく一部、やたらアクロバティックな操作を求めてくるものがあるが特に重要ではなく、大した報酬も考察要素も得られないので無視でいい。

 アクションは弛いのだが、ゲームそのものの難点として、主人公の脚がまぁまぁ遅いわりにファストトラベルが有料なところが挙げられる。島にあるお金は有限なので、変に気を揉むはめになる。お金の総量はアンロック分を差し引いてもかなり多めに余るため、丹念に探索していれば、早々無くなることはないが……。

 余談だが、パラダイス島の通貨はブラッドクリスタルという。これの設定が案外しっかりしていて驚いた。大変いい。

 

どんな世界観?

 オープニングから専門用語と比喩表現がひしめき、圧倒的機械翻訳が独特な固有名詞を伴ってやばいことを言ってくる。主人公はパラダイス(地名、島)から300万日追放されていた元パラダイス心理捜査官長のレディ・ラブ・ダイ。初速からぶっ飛んだ独自ワールドに説明なしにぶっこまれる感じ、スカイリムを思い出す。スカイリムほどの無茶な物量攻めはしてこないので、これらの独特な用語たちもゲームをプレイしていけば自然と理解できる。

 理解できるが、わりと突拍子もない世界観なので、ソフトのあらすじはちゃんと読んでおかないと理解が遅れる。加えて、以下の4つの名詞の使われ方は事前に知っておくべきだと思う。

【シンジケート】貴族階級の人々。寿命を克服した、ほぼ不老不死の人間。

【庶民】シンジケートの対義語として、広義に使われるものよりも階級的意味合いが強い。

【神々の名前】だいたいが「形容詞+名詞」で表される。「忌々しい調和」「魅惑の紺碧」など。

【証人】個人名。「終焉の証人」というキャラクターのこと。謎解きゲームの触れ込みで、かつ裁判があるのに“証人”が個人名は悪手では?


翻訳どう?

 やや悪い。独特の固有名詞や知らない常識を前提として組み立てられた会話文は内容が捉えづらく、システマチックな翻訳や原文の煙に巻くような言い回しなどが組み合わさって、要点が掴めるまではかなり読みづらさを感じると思う。一度頭の中で再翻訳する必要がある部分も少なくない。その上文章も多い。推理や進行を阻害するような致命的な誤訳はないのだが、誤字・脱字・発言者を取り違えているような口調のブレは時々見られる。それと、大したことではないものの(考察的には大したことかもしれないが)多分、血の道のりで会話している??側の性別が違うと思う。??は仔細不明につき考察の余地が広すぎる自由帳枠なので、断言はできないが。

 選択肢についても、文頭に発言内容のニュアンスは書かれているものの、全文は表示されないため、プレイヤーが思ってもみないことを主人公が口走ることがある(ノベルゲームあるある)。選択肢を間違えるという概念はないのでゲーム進行には特に影響はないとはいえ、協力的な人に突然ひどい言葉を投げつけてしまって心が痛むことはある。

 上記の通り、会話文の訳については多少難があるが、証拠品や捜査メモの文章は簡潔で分かりやすい。島中にベタベタ貼られたポスターなどもキッチリ和訳されており、かなり熱心に翻訳されているのが見て取れる。

 

ぶっちゃけおもしろい?

 ぶっちゃけおもしろい。設定がまず最高だよね。ずっと浸っていたいと思わせる独創的な世界観と、おどろおどろしい人間模様がたまらない。終盤のコミカルなおぞましさなんて芸術的だと思う。ウィットと皮肉に富んだやりとりも癖になる。慣用句なんかも世界観に沿った言い回しがされていて、そういう気配りができるほどに作りこまれた世界観に何度でも感銘を受けちゃって好きが高まるよね。

 とどのつまり、このゲームのおもしろさはその「世界観」に大きく依存している。ジャンルとしてはアドベンチャービジュアルノベルに当たるだろうが、ウォーキングシミュレーターの魅力に近いものがあるため、端的に言えば「PV見て好きだと思ったら買い」ということになる。また、私は不勉強にして未プレイだが、シルバー事件killer7などのいわゆる「須田ゲー」っぽさがあるという。確かに、プレイ中にノーモア★ヒーローズのPVが脳裏をよぎったことはままある。


 正直私はめっちゃ好き。同じ世界観設定で別のゲームが出るなら即買いすると思います。

 

 エンディングが差分レベルのもので2つしかない(多分2つ。私には他に見つけられなかった)のが物足りないが、裁判内容はかなり無茶苦茶できる。たまんねぇな、慈悲も善悪も道徳も脇に置いた正義の執行ってのは。

 地味なところだが、プレイリストを作って探索中に好きなBGMを流せる珍しいシステムなんかもある。moon以外でお目にかかるのは初めてかも。この「BGMを自分で設定する」――つまり「何かに集中して取り組むために、お気に入りの曲をかける」という、実際に現実でも行うプロセスを、ゲーム内で踏襲することで生まれる没入感というのは、結構馬鹿にできない。特に、プレイヤー自身の思索と探索によって展開されるゲームにおいては、効果的にゲームへ引き込めるギミックだといえる。

 

まとめ

 見た感じ癖のある(っていうか癖しかない)ゲームだが、プレイ感覚自体はオーソドックスで触りやすいと思う。3D酔いしやすい人にはお勧めしない。端から端まで探索するのが好きな人や、独特の世界観に惹かれた人は、ぜひプレイしてみてほしい。

 以下にSteamのURLを貼っておくので、気になる人は見てみてほしい。